IRの資格「IRプランナー」は必要?取る価値とキャリア形成のポイントを解説
この記事の結論
- IRプランナーといった資格は必須ではないが、体系的にIRに関する知識を学べる
- ほかにも財務報告実務検定、MBA、TOEICなどIR業務で役立つ資格はある
- IR担当は財務知識やコミュニケーション能力が必須で、責任感の大きな仕事である
IR担当者は投資家とコミュニケーションをとり、企業価値が正しく評価されるための重要な業務を担っています。
この記事ではIR担当者向けの資格として有名な「IRプランナー」や、IR担当者に何が求められているのか解説していきます。
IRプランナー(CIRP)とは
IRプランナー(CIRP)はIR業務に必要な知識やスキルを認定する資格で、”特定非営利活動法人 日本IRプランナーズ協会”が提供しています。
IRプランナーには以下の2種類があります。
- 日本IRプランナーズ協会検定会員(CIRP)
IR実務未経験者、IR実務経験者(3年以内)を目安とし、取得可能な基礎資格。 - 日本IRプランナーズ協会検定会員S級(CIRP-S)
IR・総務(株式関連業務)実務経験者(実務経験3年以上)を目安とし、取得可能な上級資格。
※現在CIRP-Sは講習の準備中。
IRプランナー試験を受けるには、認定講座を受講する必要があります。
IRプランナー講座は大手上場企業を中心に2,000人以上が受講しており、特に新任IR担当者向けの講座となっています。
受講料は全3回で11万円(税抜)となっています。
IRプランナーは意味ない?
結論、「意味はあるが、資格を持つ必要性はない」と言えます。
IRプランナーの試験内容には資本市場、企業分析、情報開示とIR活動、総合問題(レポート)の4科目があり、IR担当者として押さえておくべき知識が網羅されています。
計算問題や記述式の問題もあるため、IR活動の本質を理解する手助けになるでしょう。
ただし、これらの知識はIRに関する書籍や実務活動を通じて身につくものが大半なため、あえてIRプランナーの資格を取る必要性はありません。
特に最近ではXやオンライン・対面でもIR担当者同士の交流や情報交換が活発になっているため、最新の知識や経験則は手に入りやすくなっています。
日本IRプランナーズ協会の開くセミナーページを見ると、2021年から更新情報が止まっている点も注意しておきましょう。
IRプランナーに受かるためには?
まず、試験は半年に一回行われます。
そして、試験の2か月ほど前に行われる「IRプランナー講座」の受講は必須となっています。
難易度は回によってまちまちですが、直近4回の合格率は60%程度となっています。
特に1回で全ての科目に合格した「全科目合格率」は40%程度と半数以上が落ちてしまっています。
資格取得のためには講座の内容を復習し、ある程度の学習時間を設ける必要がありそうです。
IR担当に求められるスキル・資格
IR担当として活躍するには、コミュニケーション能力や財務知識が欠かせません。
自社の企業価値が正しく評価されるためにも投資家とのコミュニケーションは大切であり、株価指標や財務データを元に論理的にコミュニケーションを取る必要があります。
以下では、IR業務に役立つ資格を見てみましょう。
- 財務報告実務検定
- MBA
- TOEIC
財務報告実務検定
財務報告実務検定は、企業の財務報告に関する実務的な知識を認定する資格です。
費用は約2万円程度で、試験範囲には簿記の他に会社法、監査の内容が含まれます。
難易度はそれほど高くなく、財務報告の基礎を学ぶことでIR業務にも大いに役立ちます。
MBA
MBAは、ビジネススクールで経営学を修了した人に授与される大学院修士号のこと。
ビジネススクールでは経営全般の知識やスキルを学ぶことができますが、費用は数百万円と高額です。
MBA取得には2〜3年かかることが一般的ですが、IRに限らず、CFOやCEOを目指す方にはおすすめです。
TOEIC
IR業務では、時価総額が高ければ高いほど海外の投資家とやり取りする機会も多く、英語力があると重宝されます。
TOEICのスコアはその証明として有効です。
受験費用は約7,000〜8,000円で、700点以上のスコアがあればまずまずでしょう。
IR部門に入社・配属されるには
新卒で直接IR部門に配属されることは少なく、多くの場合、経理部門や財務部門からの異動や、中途採用で配属されることが一般的です。
中途採用では、特に簿記などの資格や財務や経営に関する経験が重視されます。
IR部門で働くためには財務情報だけでなく、自社の事業内容や人材戦略(人的資本)といった非財務情報も知っておく必要があります。
IR部門のキャリアパス
IR部門でのキャリアは、経験を積むことで将来的にCFO(最高財務責任者)や経理部長など、企業経営の中核を担うポジションへの道が開けます。
IR業務では自社の成長戦略や財務戦略への理解も必要なため、自然と企業経営に関わる知識・経験が身につきます。
IRは経営層との距離も近いため、将来的なキャリアアップにも役立ちます。
IR担当者の市場価値は?需要は高まる?
IR担当者の需要は年々高まっています。
以前はIR活動=仕方なくやるもの、といった企業も多かったですが、近年は大きな変化が起きています。
東証の市場再編によりプライム市場の上場維持基準が厳格化され、IR活動に力を入れる企業が増えています。
またアクティビストによる投資も増えており、投資家とのコミュニケーションは重要となっています。
それに付随して財務面の豊富な知識と英語を含めたコミュニケーション能力を兼ね備えたプロのIR担当者は市場価値が高まるでしょう。
経営層やアナリストとコミュニケーションをとる業務が多いため、人脈の広がりもあります。
IR担当者は辛い?
IR担当者は株式市場や経営戦略など様々な知識・スキルが求められるため、難易度の高い仕事です。
自社の財務状況を正確に把握し、投資家に対して誤解のないように説明することが重要です。
そのため、プレッシャーが大きく辛い仕事と感じる人もいます。
ただし、自分の働き次第で時価総額が上がったり、株主から感謝されるなどやりがいも多い仕事です。
まとめ IRに資格は必要ないが、様々な知識・スキルの習得は不可欠
最後に本記事の内容をまとめます。
- IRプランナーといった資格は必須ではないが、体系的にIRに関する知識を学べる
- ほかにも財務報告実務検定、MBA、TOEICなどIR業務で役立つ資格はある
- IR担当は財務知識やコミュニケーション能力が必須で、責任感の大きな仕事である