中期経営計画(中計)とは?盛り込むべき要素や作り方を解説

中期経営計画とは画像

この記事の結論

  • 中期経営計画とは企業が3~5年間で達成すべき目標と戦略を明確にした経営計画
  • 短期計画と長期計画をつなぐ役割を持ち、IR活動の中核ツールとして機能する
  • 投資家との信頼関係構築と企業価値向上に直結する重要な資料

中期経営計画(中計)は、企業が3~5年間で目指すべき方向性と具体的な戦略を示した計画書です。

しかし、IR担当者の中には「なぜ中期経営計画が必要なのか」「どのように作成すればよいのか」と悩んでいる方も多いでしょう。

本記事では、IR担当の初心者向けに中期経営計画の基本から作成方法、投資家が注目する点まで詳しく解説します。

目次

中期経営計画とは

中期経営計画とは、企業が3~5年間で達成すべき経営目標と、その実現に向けた具体的な戦略・行動計画をまとめた資料のことです。

中計と略して呼ばれることも多く、具体的に含まれる要素としては以下のとおり。

中期経営計画に含まれる主な要素
  • 経営理念・ビジョンの再確認
  • 現状分析(SWOT分析等)
  • 3~5年後の数値目標(売上・利益・ROE等)
  • 目標達成のための具体的戦略
  • リスク要因と対策

売上目標などの定量的な数値だけでなく、市場戦略や組織強化といった定性的な取り組みも含まれるのが特徴です。

投資家や株主に対し、企業の成長戦略を説明する重要なIR資料としても活用されています。

短期経営計画や長期経営計画との違い

中期経営計画は、短期経営計画(1年以内)と長期経営計画(5〜10年程度)の中間ということで、役割にも違いが見られます。

種類目安期間特徴主な目的
短期経営計画1年以内具体的なアクション中心年度目標の達成
中期経営計画3~5年程度戦略と数値のバランス持続的成長の実現
長期経営計画5〜10年程度抽象的なビジョン中心企業の方向性の明示

短期計画は具体的なアクションを重視する一方、長期計画は抽象的なビジョンが中心となりやすいです。

中期経営計画は具体性と実現可能性のバランスが取れた計画として、経営の指針となります。

このように各計画は相互に連携し、企業の持続的な成長を支える重要な役割を担っています。

中期経営計画が必要な理由とは?

中期経営計画は、企業が持続的に成長するための指針です。

ここでは、なぜ中期経営計画が企業経営に不可欠なのか、3つの観点から詳しく見ていきましょう。

企業にとって自社の課題や方向性が明確になる

中期経営計画の策定プロセスを通じて、企業の現状と将来のあるべき姿が明確に可視化されます。

企業が得られるメリットとしては以下などがあり、これまで見えていなかった課題発見につながることも。

  • 経営陣と現場の目標認識の統一
  • 社員のモチベーション向上と離職率低下
  • 投資判断の精度向上
  • 業務効率化と生産性向上

経営資源の配分も戦略的に行えるため、無駄な投資を避けて効率的な成長が実現可能です。

投資家との信頼関係構築に不可欠な要素である

投資家は企業の将来性を判断する際、明確な成長戦略と実現可能性の高い計画を重視します。

中期経営計画は、企業の透明性を示すとともに、経営陣の戦略的思考力をアピールする機会となります。

特に機関投資家は、ROEやROICなどの資本効率指標を含む中期計画を投資判断の重要な材料としています。

計画の進捗を定期的に報告することで、投資家からの継続的な信頼を獲得できるでしょう。

IR活動の中核ツールとしての価値が高い

中期経営計画は、決算説明資料や有価証券報告書などの他のIR資料とは異なる独自の価値を持ちます。

過去の実績ではなく将来の戦略を重視するため、投資家にとって魅力的なエクイティストーリーを提供できます。

エクイティストーリーとは?
投資家に向けて、自社の特徴・成長戦略・企業価値向上の道筋を分かりやすく説明するストーリーのこと。

決算説明会や投資家説明会でのプレゼンテーション資料としても活用され、企業と投資家間の双方向のコミュニケーションを促進します。

ESGも含めた統合的な企業価値を伝えることで、長期投資家の関心を惹けるでしょう。

中期経営計画に盛り込むべき内容

効果的な中期経営計画を作成するには、投資家や社内の関係者が求める要素を適切に盛り込むことが重要です。

具体的に、ぜひ盛り込みたいのが以下の8点。

中期経営計画の構成要素
  • 経営理念・ビジョンの明文化
  • 外部環境分析と内部環境分析
    • SWOT分析など
  • 財務目標
    • 売上、利益、ROE、ROIC等の定量指標
  • 非財務目標
    • 顧客満足度・従業員満足度・社会貢献など
  • 成長戦略と競合優位性の確立方針
  • ESG経営への取り組み
    • 環境、ガバナンス、社会
  • 事業リスクの分析と対策
  • 資本政策と株主還元方針

特に近年は、財務目標だけでなくESGや非財務情報への注目も高まっています。

投資家が特に注目するポイント

投資家が特に注目するのは、財務目標の実現可能性と成長戦略の具体性です。

ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)などの資本効率指標は、機関投資家の投資判断に直結します。

投資家の注目度を項目別に整理すると、以下のような傾向があります。

項目カテゴリ具体例投資家の注目度
財務目標売上成長率、営業利益率、ROE非常に高い
成長戦略新規事業、M&A、海外展開高い
ESG要素CO2削減、ダイバーシティ推進上昇中
リスク対策市場変動、規制変更への対応中程度

また、競合他社との差別化要因や市場でのポジショニングを明確に示すことで、投資魅力度が向上するでしょう。

ESG要素については、持続可能な経営への取り組みとして、長期投資家からの評価向上に期待できます。

中期経営計画の作り方5ステップ

初心者IR担当者でも実践できる、効果的な中期経営計画の作成手順を5つのステップで解説します。

STEP1:現状分析と課題の明確化

中期経営計画の策定では、まず自社を取り巻く環境を客観的に分析することから始めます。

分析対象の一例としては、以下のとおり。

  • 決算書のデータ
  • 従業員数や構成比率などの人的リソース
  • 各事業部の営業力や開発力など

企業としての成長性や組織風土も含めて、自社の現状を多方面から把握することが大切です。

同時に、どんな商品・サービスで競争するのかを検討し、技術面や価格面から市場における競争力を分析していきます。

STEP2:経営理念・ビジョンの再確認

中期経営計画の策定では、以下3つの要素から構成される経営理念を明確にすることから始めます。

  • ミッション
    • 企業が果たすべき使命
  • ビジョン
    • 企業が目指す具体的な姿
  • バリュー
    • 社員の行動規範となる価値観

その上で、各要素が現在の事業環境と整合しているかを検証していきます。

必要に応じて見直しも行うことで、計画全体の軸がより明確になっていくでしょう。

STEP3:数値目標と戦略の設定

経営理念と現状分析を踏まえて、具体的な経営戦略を立案します。

自社が抱える課題に対してどのような方法で取り組むか、どの事業に力を入れていくかを決定しましょう。

ビジネスドメイン(事業領域)を明確化し、経営理念に反する事業展開を避けることで、リスクを回避できます。

その上で、ビジョンを実現するために必要な資源を逆算し、従業員が納得できる現実的な数値目標を設定することが重要です。

STEP4:行動計画への落とし込み

経営戦略が明確化したら、具体的な行動計画と数値目標として各部門に展開します。

どの課題をどれくらいの期間で達成するのかを明らかにし、各部門が取るべき行動を具体的に示しましょう。

目標設定では、低すぎても高すぎても従業員のモチベーションに悪影響を与えるため、適切なレベルを見極めることが大切です。

「現在の給与の2倍を支払いたいので、利益が○○は必要」といった合理性のある説明により、従業員の理解と協力を得られるでしょう。

STEP5:進捗管理とモニタリング体制

中期経営計画を実効性のあるものにするには、定期的な進捗度を測るモニタリング体制が不可欠です。

年度ベースの計画を月次ベースに細分化し、予算と実績を比較して差異分析を行います。

効果的なモニタリング体制に必要な要素としては、主に3つです。

  • 単年度計画の策定
    • 月次ベースでの予実管理と差異分析
  • PDCA会議
    • 月次ベースでの全社的な意識付けと改善活動
  • 業績評価
    • 部門別の実行状況を評価し、全体のモチベーション向上につなげる

この5つの段階を経て策定した中期経営計画をもとに短期経営計画を作成し、月次ベースで達成すべき課題を明確にしていきます。

まとめ【中期経営計画でIR活動を強化しよう】

中期経営計画は、企業の持続的成長と投資家との信頼関係構築に不可欠なツールです。

最後に、本記事の重要ポイントを振り返ってみましょう。

  • 中期経営計画とは企業が3~5年間で達成すべき目標と戦略を明確にした経営計画
  • 短期計画と長期計画をつなぐ役割を持ち、IR活動の中核ツールとして機能する
  • 投資家との信頼関係構築と企業価値向上に直結する重要な資料

中期経営計画は単なる数値目標の設定ではなく、企業の将来ビジョンを具体化し、全社員が同じ方向を向いて努力するための指針です。

また、投資家や金融機関からの信頼獲得により、資金調達の面でも大きなメリットをもたらすため、作り方のステップに基づいて作成していきましょう。

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