IRとPRの違いとは?IR担当者が知っておくべき基本知識を具体例を交えて解説
この記事の結論
- IRは投資家向けの広報、PRはメディアを通じた情報発信
- IRは投資家向け、PRは一般社会や消費者向けであり、対象が異なる
- IRとPRの部門では、連携することが求められる
企業にとって、自社の情報を広めるために大切なIRとPR。
これらが具体的に何が違うのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、IRとPRの違いを、具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。
また近年では、IRとPRが連携することが求められていますが、その理由も記事の後半で紹介します。
IRとPRの違いとは?
まずは、IRとPRの違いについて見ていきましょう。
IRとPRの違いとは?
IRとPRの違いをまとめると、以下の表の通りです。
IR | PR | |
---|---|---|
正式名称 | Investor Relations | Public Relations |
意味 | 投資家向け広報 | メディアを通じた情報発信 |
対象 | 投資家 | 一般社会や消費者 |
目的 | ・投資家との良好な関係の構築・市場から適正な評価を受ける・企業の社会的価値を高める | ・自社のイメージアップ・認知度の向上 |
IRは投資家向けですが、PRは一般社会や消費者向けであり、その対象が大きく異なります。
IRと広報・SRとの違い
また、IRに似ている用語として広報やSRなどがあります。
それぞれどのような違いがあるのか、見ていきましょう。
IRと広報の違い
IRと広報の大きな違いは、発信をする対象が異なることです。
IRは、投資家に対して企業情報を発信します。その際、ポジティブな情報だけでなく、自社の課題とそれに対する取り組みも開示します。
一方で、広報はステークホルダーに対して、自社の情報をメディアなどを通じて発信し、認知拡大・イメージアップするための活動です。
IRと広報の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
IRとSRの違い
IRとよく混同される言葉として、「SR」もあります。
SRは「Shareholder Relations」の略で、株主とコミュニケーションを取り、良好な関係を築くための活動です。
大きな違いはその対象で、IRが投資家向け(株主も含む)であるのに対し、SRは株主向けです。
SRの具体的な内容として、以下の2つがあります。
- 株主総会における議案説明、質問対応
- 株主とのコミュニケーション(機関投資家との個別面談)
これはIRの業務としても行われますが、特に株主に焦点を当てた活動を行う場合にSRという言葉が使用されます。
SR活動を重視している企業の場合は、IR部門に加えSR部門も設置しています。
IR活動の具体例
IRとは、Investor Relationsの略で、「投資家向け広報」や「投資家対応」のことです。
企業が自社の業績や経営方針・財務状況などの情報を提供し、投資家と良好な関係を築くための活動を行います。
IR活動の具体例は、以下の通りです。
- 決算説明会の開催
- IRセミナーの実施
- 1on1 MTG
- 報告書(統合報告書・株主通信)の作成
- 適時開示・ニュースリリースの配信
IRについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
日本IR協議会は、毎年「IR優良企業賞」を開催しており、優れたIR活動をしている企業を選定・発表しています。
ここでは、IR優良企業賞を過去に複数回受賞している「日立製作所」と「三菱UFJフィナンシャル・グループ」のIR活動の事例を見ていきましょう。
日立製作所
まずは日立製作所のIR活動について紹介します。
日立製作所は、2023年にIR優良企業大賞を、2022年・2020年・1996年に優良企業賞を受賞しています。
以下の活動が大きく評価され、大賞を獲得しました。
- 毎年開催しているInvestor Dayや決算説明会において、投資家からのフィードバックを踏まえ内容を進化
- 人的資本などテーマ別にサステナビリティ関連の説明会を開催
- 統合報告書を簡潔にし、見やすくすると共に、その説明機会を設置
投資家への説明機会を多く設けることで、投資家から信頼を得ている事が分かります。
三菱UFJフィナンシャル・グループ
続いては、三菱UFJフィナンシャル・グループ。
三菱UFJフィナンシャル・グループは2019年に優良企業大賞を、2023年・2018年・2017年に優良企業賞を受賞しています。
受賞された理由は以下の通り。
- 経営トップが投資家の目線に応えるIR活動を実施
- 一貫性のある中期経営計画
- 環境変化の影響やPBRへの意識といった投資家の関心事もタイムリーに説明
- 経営目標などの情報を的確に把握しており、対話の実効性がある
投資家への説明機会を多く設けることで、投資家から信頼を得ている事が分かります。
参考:IR(投資家情報)|三菱UFJフィナンシャル・グループ
PR活動の具体例
PRは「Public Relations」の略で、メディアを通じた情報発信のこと。
具体的には、メディアに情報を提供し、掲載・放映してもらうことで、企業のイメージアップや認知度の向上を目指します。
その対象は広報よりも広く、一般社会や消費者向けです。
PR活動の具体例としては、以下の活動など。
- メディアリレーションズ
- プレスリリースの作成
メディアリレーションズは、メディアとの関係づくりや取材対応を行う活動のこと。
またプレスリリースは、企業の新商品やサービスの情報、経営に関する情報などを報道機関向けに公式に発信する文書や資料のことです。
IRとPRが連携すべき3つの理由
IRとPRの違いは分かりましたが、共通点はあるのでしょうか。
結論、大きな共通点は「企業情報を社外に向けて公開すること」です。
そしてこの共通点があるからこそ、IRとPRは連携が大事になります。
この理由を、以下の3つの観点から説明していきます。
- IR情報をプレスリリースで発信することも
- 適時開示情報が漏れると、売買停止に
- SRI(社会的責任投資)の普及
IR情報をプレスリリースで発信することも
IR情報をプレスリリースで発信することもあるため、このような場合にはPRとIRの連携は必須です。
通常の適時開示情報や決算資料などはIR資料として発行します。
しかし、投資家だけでなく、消費者や取引先などにも大きく影響する情報はプレスリリースとして広く一般に発信することが望ましいでしょう。
この場合は、IRとPRは連携する必要が出てきます。
適時開示情報が漏れると、売買停止に
投資判断に関わる適時開示情報が、開示前にメディアへ漏れ報道されると、一時的に株式の売買が停止されてしまいます。
また売買が停止されるだけでなく、公正な取引が行われなくなるため、投資家からの信頼は大きく失われてしまうでしょう。
このような事態を未然に防ぐためにも、常日頃からIRとPRが連携をし、情報管理を行うことは非常に重要です。
SRI(社会的責任投資)の普及
近年ではSRI(社会的責任投資)が普及していることもあり、IRとPRの連携の重要性は増しています。
社会的・倫理的な観点である社会的責任(CSR)も考慮して投資先を選ぶ投資手法のこと
CSRへの取り組みは企業のイメージアップにつながるため、一般的にプレスリリースとして発信されます。
しかし、SRIが普及したことにより、PR担当は投資家への影響も考えた発信を行っていく必要があるでしょう。
またその逆も然りで、IR担当社が消費者や取引先にも影響する情報を発信する場合、PRのように一般に広く・わかりやすく伝える意識が求められます。
【まとめ】IRとPRは連携が大切
IRとPRの違いや共通点について理解は深まったでしょうか。
IRは投資家に対して広報活動を行うことで、投資家と良好な関係を築くことを目的とします。
一方、PRは一般社会や消費者に対し、メディアを通じて広く情報を発信することで企業のイメージアップを図ります。
しかし、近年ではIRとPRの連携は非常に重要になってきており、企業価値向上のためには必須の取り組みです。
PRを行う部門と適切に連携を行いながら、自社のIR活動を充実させていきましょう。