バーチャル株主総会とは?導入メリットと実施手順を詳しく解説

バーチャル株主総会とはアイキャッチ

この記事の結論

  • バーチャル株主総会はIT技術を活用してオンラインで開催する株主総会で、上場企業の約20%が既に導入
  • コスト削減・株主参加率向上・海外投資家へのアクセシビリティ向上という3つの主要メリットがある
  • 成功の鍵は6か月前からの準備期間確保と、株主への丁寧な事前説明・適切なシステム選択

バーチャル株主総会はコロナ禍を契機に急速に普及し、現在では上場企業のうち約20%がすでに導入しています。

しかし、「導入を検討しているが何から始めればよいか分からない」「メリットは理解できるがリスクも心配」といったIR担当者も多いでしょう。

本記事では、バーチャル株主総会の基本概念から具体的な導入メリット、成功事例を踏まえた実施手順まで、IR担当者が知っておくべき重要なポイントを解説します。

担当者が知っておきたいIR活動とは?
目次

バーチャル株主総会とは

バーチャル株主総会とは、IT技術を活用してオンラインで開催する株主総会のことです。

従来の会場に集まる形式とは異なり、インターネットを通じて株主が自宅やオフィスから参加できる仕組みとなっています。

投資家との新しいコミュニケーション手段として期待されるバーチャル株主総会について、まずは以下のポイントを押さえましょう。

バーチャル株主総会の3つの種類

バーチャル株主総会には、参加形態によって3つの種類があります。

最も多く採用されているのがハイブリッド参加型で、会場開催とオンライン視聴を併用する形式。

3つの形式には、以下のようにそれぞれ異なる特徴があります。

種類会場開催オンライン視聴オンライン議決権
ハイブリッド参加型×
ハイブリッド出席型
バーチャルオンリー型×

バーチャルオンリー型は完全にオンラインのみで開催され、最も先進的な形式として注目が高まっています。

従来の株主総会との違い

従来の株主総会では、指定された会場への物理的な出席が必要でした。

バーチャル株主総会では、地理的制約を受けることなく、全国どこからでも参加できます。

従来のオフライン形式における株主総会と、バーチャル株主総会での主な変化点は以下のとおりです。

  • 開催場所:指定会場 → どこからでも参加可能
  • 参加方法:物理的出席 → オンライン接続
  • 質問方法:挙手発言 → チャット機能
  • 視聴機会:当日のみ → アーカイブ視聴も可能

録画機能により、後日アーカイブ視聴も可能となり、株主の利便性が大幅に向上しています。

急速な普及の背景

バーチャル株主総会は2020年のコロナ禍をきっかけに、急速に普及しました。

そして近年は、デジタル化推進やESG経営の観点からも、バーチャル株主総会の注目度も上昇中です。

2025年3月期決算会社において、バーチャル総会を実施予定の企業数は全体の18.1%である317社に増えています。
出典:東京証券取引所「2025年3月期決算会社の定時株主総会の動向について」

2025年3月期決算会社における株主総会の実施形態
形態企業数
実出席のみ1,437社(81.9%)
ハイブリッド参加型317社(18.1%)
ハイブリッド出席型288社(16.4%)
バーチャルのみ16社(0.9%)
合計13社(0.7%)
出典:東京証券取引所

ハイブリット型を中心として、継続的に導入企業は増えているといえるでしょう。

バーチャル株主総会のメリット

バーチャル株主総会の導入により、企業と株主の双方にさまざまなメリットが生まれます。

特にコスト削減や参加機会の拡大という側面で、従来の株主総会では実現できなかった価値を提供できます。

IR戦略の観点でも、投資家との新しい接点を創出できる重要なチャンスなので、それぞれ確認していきましょう。

企業側の主要メリット

企業にとって最も大きなメリットは、会場費・印刷費・人件費の大幅削減が期待できることです。

従来は会場レンタル費用だけで数十万円から数百万円のコストが発生していました。

バーチャル開催により、以下のようなコスト削減効果が考えられます。

  • 会場レンタル費用
    • 年間数百万円の削減
  • 招集通知の印刷・郵送費
    • 印刷・郵送をほぼ全廃
    • 送付重量を9割削減した企業も
  • 運営スタッフの人件費
    • 大幅な工数削減
  • 感染症対策費用
    • 不要となる

招集通知の印刷や郵送費については、送付重量を9割減らせた企業も存在するほどです。
出典:アステリア「総会資料の電子化推進! バーチャル株主総会※1 をアップデート 会社法改正に対応し 招集通知 の印刷をほぼ全廃 & 送付重量9割削減」

運営工数の削減により、IR担当者はより戦略的な業務に集中できる点にも期待できます。

株主が感じる利便性の向上

株主が実際に感じる最大のメリットは、何と言っても移動時間と交通費が不要になる点です。

これにより、株主の地理的・経済的な不平等感の解消につながります。

さらにアーカイブ動画を残せば、いつでも株主総会の内容を確認できる点も支持されるでしょう。

IR戦略上のメリット

IR戦略の観点では、海外投資家の参加も容易になることが大きなメリットです。

時差の問題はあるものの、アーカイブ動画の視聴により海外の機関投資家も株主総会の内容を確認できます。

また、若い世代の株主層開拓にも効果的でして、ITに慣れ親しんだ投資家への訴求力を高めることが可能に。

投資家層の拡大や、ESG経営への取り組み姿勢をアピールする要素としても活用でき、企業価値向上に期待が持てます。

バーチャル株主総会のデメリットと対策

バーチャル株主総会には多くのメリットがある一方、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。

上記で挙げた欠点についても、適切な準備と対策を行えば大幅に軽減できるので、それぞれ確認しましょう。

技術的リスクと対策

バーチャル株主総会で最も懸念されるのが、システム障害や通信トラブルの発生です。

株主総会当日にシステムが停止してしまうと、法的な問題に発展する可能性も。

技術的リスクを回避するための対策は以下のとおりです。

  • 冗長化システムの構築
    • メインサーバーとバックアップサーバーの用意
  • 事前リハーサルの実施
    • 本番と同じ環境での動作確認
  • 技術スタッフの常駐
    • 当日のトラブル対応体制
  • 緊急時対応マニュアル
    • システム停止時の代替手段

実績豊富なシステム提供会社を選択することで、技術的な安定性を確保しやすくなります。

株主対応上の課題

株主対応で最も大きな課題は、以下が挙げられます。

  • 高齢株主への操作サポートが必要になる可能性
  • 株主同士の交流機会が減少する

インターネットやスマートフォン操作に慣れていない高齢の株主も一定数存在するため、入室方法の解説など丁寧なサポートは欠かせません。

また、バーチャルのみで株主総会を実施すると、株主同士の交流や企業側との直接対話の機会が失われ、株主の満足度が低下する恐れがあります。

そのため実会場とオンラインを併用したハイブリッド型で開催すれば、交流や対話の機会を保ちつつ、参加の幅も広がるでしょう。

コスト面のデメリット

ハイブリッド株主総会の導入時は、配信システムの初期費用が数十万~数百万円発生します。

また、技術スタッフの確保や株主サポート体制の構築にも人件費がかかる点は留意すべきでしょう。

そのため短期的には運用コストが増加しますが、会場費や印刷費の削減ができる分を回しての対処は十分可能です。

結果として、中長期的にはコスト回収や業務効率化が期待できますよ。

バーチャル株主総会の導入手順

バーチャル株主総会の導入には、法的検討からシステム準備まで、段階的なアプローチが必要です。

適切な手順を踏むことで、トラブルを回避し、株主満足度の高い総会を実現することが可能に。

導入までの具体的なステップを時系列で解説します。

事前準備段階(約6か月前~)

導入検討の初期段階では、顧問弁護士との法的検討が最重要となります。

定款変更の必要性や議決権行使の方法について、専門家の意見を仰ぐことが不可欠です。

社内では、IR担当者・法務担当者・システム担当者によるプロジェクトチームを編成。

複数のシステム提供会社から見積もりを取り、自社に最適なサービスを選定していきます。

準備・告知段階(約3か月前~)

株主への事前周知は、総会の3か月前から段階的に実施していきましょう。

招集通知には参加方法の詳細な説明を記載し、高齢株主にも分かりやすい表現を心がけるのが大切です。

株主総会で使用する資料についても、オンライン配信に適した形式に最適化する必要があります。

リハーサルは本番と同じ環境で実施し、想定されるトラブルの対応手順も確認しておくと安心です。

IR資料について詳しく知る

当日運営のポイント

当日は、技術スタッフと株主サポート担当者の配置が成功の鍵となります。

システム障害に備えた緊急時対応マニュアルを手元に置き、迅速な判断ができる体制を整えておくことが大切です。

株主からの質問対応では、事前質問とチャット質問を整理・分類し、代表的な質問に絞って効率よく回答していきます。

議事録作成時には、オンライン参加者の発言も適切に記録しておき、法的要件を満たすよう注意しましょう。

事後フォローと改善

総会終了後は、参加株主へのアンケート実施により、満足度と改善点を把握します。

システムの安定性、音声・映像の品質、操作性などの評価を数値化し、次回開催の参考資料とすることが重要です。

参加率の変化やコスト削減効果も定量的に測定し、投資対効果を明確にしておきます。

継続的な改善により、株主満足度の向上と運営効率化の両立を目指せるでしょう。

国内企業の導入事例と成功のポイント

実際にバーチャル株主総会を導入している企業の事例を紹介します。

成功事例から導入のポイントや効果測定方法までのプロセスも含めて、確認していきましょう。

先進企業の取り組み事例

国内でバーチャル株主総会を成功させている企業には、IT業界を中心とした先進的な取り組みが見られます。

特に以下の2社は、業界をリードする先駆的な事例として注目。

各企業の具体的な実施内容と工夫点を詳しく確認してみましょう。

GMOインターネットグループの事例

GMOインターネットグループは、2024年3月にグループ上場8社で同時開催を実現しました。

バーチャルオンリー型を採用し、従来と比較して総会時間の大幅短縮を実現。

システム統合により運営効率化を図り、株主・企業双方の負担軽減を実現しています。

グループ全体での一体感を演出しつつ、個別企業の特色も活かした運営が高く評価されました。

グリー株式会社の事例

グリー株式会社は、2019年からバーチャル株主総会のパイオニアとして継続的な改善を重ねています。

全国各地からの幅広い株主参加を実現し、地方在住の株主からも高い満足度を獲得。

拍手ボタンなどの独自機能により、オンライン参加でも一体感を創出する工夫を凝らしています。

毎年の改善により、操作性と安定性の両面で着実な向上を続けているでしょう。

その他業界の導入企業

IT業界以外でも、製造業や金融業において業界特性に応じた活用パターンが生まれています。

製造業では工場見学の映像配信と組み合わせた総会運営を実施する企業も登場。

金融業では高いセキュリティ要件を満たすシステム選択により、安全性を確保した開催を実現しています。

各業界の特色を活かした独自の取り組みが、今後の展開モデルとなっていくかもしれません。

成功企業に共通するポイント

成功している企業には、十分な事前準備期間の確保という共通点があります。

株主への丁寧な説明とサポート体制を整備し、技術的な問題よりも運用面に重点を置いた準備を行っています。

成功要因をまとめると以下のとおりです。

  • 6か月前からの段階的な準備スケジュール
  • 株主向けの操作説明会や電話サポートの充実
  • 複数回のリハーサルによる運営体制の確立
  • システム障害時の代替手段の準備

継続的な改善として、毎回のアンケート結果を次回開催に活かすなどの取り組みも重要になるでしょう。

バーチャル株主総会の効果測定と投資家からの評価

バーチャル株主総会の導入効果を正しく評価するには、定量的な指標による継続的な測定が欠かせません。

投資家やアナリストも、企業のデジタル化推進力やガバナンス向上の観点から注目しています。

効果測定の具体的な方法と投資家からの評価軸を確認していきましょう。

効果測定の重要指標

バーチャル株主総会の効果測定では、参加率の変化が最も重要な指標となります。

従来の対面開催と比較して、参加者数・参加率・地域別参加状況を詳細に分析することが大切です。

質問数や発言数の増減も、株主とのコミュニケーション活性化を測る重要な指標でしょう。

アンケート調査による満足度評価では、操作性・音声品質・全体的な利便性を数値化して継続的に改善につなげます。

投資家・アナリストからの評価ポイント

機関投資家は、バーチャル株主総会をガバナンス向上への具体的な取り組みとして評価しています。

特に株主との対話機会の充実度や、透明性向上への姿勢が重要な評価基準となっているとのこと。

主要な評価ポイントを以下にまとめました。

  • 株主参加機会の拡大による民主的な意思決定の推進
  • デジタル化推進力とイノベーションへの取り組み姿勢
  • ESG経営の一環としての社会的責任への配慮
  • 危機管理体制の強化とBCP(事業継続計画)への対応

海外投資家からは、時差を超えた参加機会の提供についても高く評価されています。

企業価値向上への影響分析

バーチャル株主総会の導入は、IR評価向上を通じた企業価値の押し上げ効果が期待できます。

導入企業の株価動向を分析すると、短期的な変動よりも中長期的な評価改善に寄与する傾向が見られます。

コスト削減による財務効率の改善と、株主基盤の拡大による資金調達力向上が主な効果として挙げられるでしょう。

ブランド価値向上の観点では、先進的な取り組みとして業界内での差別化要素となり、長期的な競争優位性の構築に貢献しています。

【まとめ】バーチャル株主総会で投資家との関係強化を実現しよう

最後に本記事の内容をまとめます。

  • バーチャル株主総会はIT技術を活用してオンラインで開催する株主総会で、上場企業の約20%が既に導入
  • コスト削減・株主参加率向上・海外投資家へのアクセスしやすさ向上という3つの主要メリットがある
  • 成功の鍵は十分な準備期間確保と、株主への丁寧な事前説明・適切なシステム選択

バーチャル株主総会は、利便性向上の取り組みから戦略的なIR活動へと発展を遂げています。

適切な準備と運営により、株主との関係強化と企業価値向上を同時に実現できるのが強み。

導入を検討されている企業は、先進企業の成功事例を参考に、自社に最適な形での実現を目指しましょう。

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