IR資料とは?種類・役割や各資料の見方をわかりやすく解説
この記事の結論
- IR資料は投資家などに対し、経営状況・財務データ・業績見通しなどの企業情報を提供するための資料
- IR資料の役割は、透明性を高めることで投資家との信頼関係を構築し、企業価値向上につなげること
- 投資家が見るポイントは、財務情報・事業のリスク・今後の見通しの3点!
上場企業は、投資家保護の目的でIR資料を開示することが義務付けられています。
しかし、IR資料にはどんな種類があり、各資料の内容が何か分からないという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、IR資料について、書かれている内容や各資料の見方についてわかりやすく解説していきます。
IR資料とは
早速、IR資料について解説していきます。
IR資料とは、企業が投資家・株主などに対して、経営状況・財務データ・業績見通しなどの企業情報を提供するための資料のこと。
投資家は、このIR資料をもとに投資判断を行います。
企業にとっては自社の経営状況や魅力を投資家に伝える資料になるため、非常に重要な役割を果たします。
IR資料の種類とその内容
では、IR資料にはどのような種類があるのでしょうか。
ここでは、主に以下の5つを紹介します。
内容 | 開示義務と頻度 | 開示期限 | |
---|---|---|---|
決算短信 | 財務情報や経営状況 | 四半期毎 | 45日以内(30日以内が望ましい) |
決算説明資料 | 決算説明会で話す内容(決算情報+α) | 開示義務なし | ー |
中期経営計画 | 今後3-5年の目標・見通し | 開示義務なし | ー |
有価証券報告書 | 財務情報や事業の状況、株式情報など | 各事業年度毎 | 3カ月以内 |
統合報告書 | 財務情報+ESGなど非財務情報 | 開示義務なし | ー |
資料の目的や記載するべき情報は各資料ごとに異なりますが、それぞれ重要な役割を果たします。
決算短信
決算短信は、自社の決算内容をまとめた書類のことです。
四半期ごとに経営成績や財務情報を開示し、1事業年度で通期の決算短信を開示します。
財務情報や今期の業績に至った理由などを事実ベースで細かに記載する点が特徴的です。
フォーマットは証券取引所が定めており、開示は決算期末後の45日以内が適当、30日以内の開示が望ましいとされています。
決算説明資料
決算説明資料は四半期ごと、あるいは半期・1年ごとに開かれる決算説明会で使用されるスライド形式の資料です。
決算短信と異なり、フォーマットは自由であるため、自社の魅力を最大限に伝えられる点が特徴です。
グラフや図解を多く用いて、配色も見やすいようにすることで、投資家が理解しやすい資料にする必要があります。
最近では決算説明会は半期毎でも、決算説明資料は四半期毎に開示する企業が増えています。
中期経営計画
中期経営計画は、企業の3-5年後までの定量的な目標をまとめた資料のことです。
作成・開示ともに義務ではありませんが、投資家に対して中期の方針を説明する上では非常に重要な資料となります。
東証プライム上場企業を中心に、年々開示する企業数は増加しています。
有価証券報告書
有価証券報告書は、事業年度ごとに企業情報や経営状況を報告する資料です。
各事業年度末3か月以内に内閣総理大臣に提出することが義務付けられています。
決算短信と比較して速報性は劣りますが、その分企業情報が細かく記載されている点が特徴です。
例えば、事業内容や企業の沿革、経営上のリスクなどの情報があり、ページ数は100ページ以上にのぼります。
公認会計士あるいは監査法人の監査が義務付けられており、情報の信憑性はかなり高いと言えるでしょう。
統合報告書
統合報告書は、財務情報だけでなくESGへの取り組みなど非財務情報も統合して記載する資料のことです。
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉
統合報告書を通して、投資家に自社の価値や持続可能性を伝えることができます。
開示義務はないものの、開示企業は年々増加しています。
IR資料の目的・役割
IR資料の目的や役割として、以下の3つを紹介していきます。
- 透明性を高める
- 投資家との信頼関係を構築する
- 企業価値の向上につなげる
透明性を高める
IR資料の役割として、企業の透明性を高めることが挙げられます。
経営状況や財務情報、今後の見通しなどを適宜開示することで、投資家への透明性を高められます。
投資家との信頼関係を構築する
IR資料を開示することで、投資家との信頼関係を構築することも目的の一つです。
投資家はIR資料をもとに投資判断を行うため、IR資料を開示し透明性を高めることで、投資家から信頼を集めることができます。
また、昨今では海外投資家が日本株に積極的に投資を行っており、海外投資家との信頼関係を構築することも重要です。
これに伴い、25年4月からはプライム市場に上場している企業に対して、IR資料を英文で開示することが義務化されます。
参考:プライム市場における英文開示の拡充に向けた上場制度の整備の概要|JPX
海外投資家との信頼関係を構築するためには、英文でのIR開示も欠かせないでしょう。
インベストメントブリッジでは資料の英文開示支援も提供しています。
企業価値の向上につなげる
IR資料の最終目標は、企業価値の向上につなげることです。
上述している通り、投資家はIR資料を読んだうえで投資判断を行います。
そのため良いIR資料を開示することで、投資家からの信頼が集まり、株価や企業価値の向上につながるでしょう。
開示義務のない決算説明資料や中期経営計画・統合報告書なども、企業価値向上のためには開示することが望ましいと言えます。
IR資料の見方・見るべき情報
続いて、IR資料の見方や投資家が見ている情報について解説していきます。
主に見られる情報としては、以下の3つです。
- 財務情報
- 事業のリスク
- 今後の見通し
財務情報
まず、「財務情報」は投資家が最優先で見る項目です。
最新の決算状況に関しては、決算短信や決算説明資料・有価証券報告書を通して確認します。
この際、今期の決算内容、前期との比較、通期計画に対しての進捗率などが重要視されます。
今期の業績をデータで示すだけでなく、その業績に至った理由を含めて記載・説明することが望ましいです。
事業のリスク
また、決算説明資料に事業リスクを記載し、決算説明会で説明を行う企業も多くあります。
必ずしも決算説明資料に事業のリスクを載せる必要はありませんが、投資家に対して真摯に情報を公開するという意味では記載することが望ましいでしょう。
その際、単にリスクを記載するだけでなく、リスクへの対策・取り組みも必ず説明しましょう。
今後の見通し
また投資家が投資判断をする上で、「今後の見通し」や「経営方針」も必ず見るポイントです。
来期の見通しは決算短信や決算説明資料に記載し、複数年にわたる中期的な見通しは中期経営計画に記載します。
投資家は企業成長を期待して株を買うため、今後の見通しは充実させるべき項目と言えるでしょう。
まとめ|IR資料の見方・見るべき情報
IR資料について理解は深まったでしょうか。
最後に本記事の内容をまとめます。
- IR資料は投資家などに対し、経営状況・財務データ・業績見通しなどの企業情報を提供するための資料
- IR資料の役割は、透明性を高めることで投資家との信頼関係を構築し、企業価値向上につなげること
- 投資家が見るポイントは、財務情報・事業のリスク・今後の見通しの3点!
IR資料には、開示が義務付けられていないものもあります。
ただ、投資家からの信頼を集め、企業価値向上につなげるためにはなるべく幅広い資料を開示することが望ましいです。
IR資料への理解を深め、適切に開示を行うことで、自社の投資家層を拡大していきましょう。