アニュアルレポート(統合報告書)って何?アニュアルレポートと統合報告書の違いを含め解説!

この記事の結論
- アニュアルレポートには企業の財務情報だけでなく総合的な情報が含まれている
- 統合報告書とアニュアルレポートに大きな違いはなく、両方出している企業は稀
- アニュアルレポートには社長インタビューなどを含め、定性的な情報も伝えるのが大切
アニュアルレポートは年に1回発行され、企業の財務情報から非財務情報まで全体を知ることができる重要な資料です。
しかし、どのような資料を作ればいいか分からない、何のために作るか分からないといったIR担当者もいるでしょう。
そこで今回はアニュアルレポートの内容やメリット、アニュアルレポートと統合報告書の違いについて解説します。
アニュアルレポート(統合報告書)とは?
アニュアルレポートとは年に1回発行するもので、1年間の企業活動結果や事業内容、今後のビジョン等企業についての総合的な内容が書かれている資料です。
開示義務はないものの、非財務情報への関心の高まりや資本コストを意識した経営の要請を受け、開示する企業は右肩上がりで伸びています。

JPXによると、統合報告書とは「企業のより良い事業計画の策定や意思決定を促し、より有用な形で企業の全体像をステークホルダーに報告することを可能にするツール」とされています。
視覚的に分かりやすくすることで、個人投資家も容易に理解できるような資料を作成することが重要です。
アニュアルレポートと統合報告書の違いは?

アニュアルレポートと統合報告書の違いはほとんどありません。
近年は「統合報告書」としてまとまっているものが増えてきています。
ただ、「アニュアルレポート」と「統合報告書」として用語的な違いをご紹介します。
アニュアルレポートと統合報告書の違いは?
アニュアルレポートは主に企業の財務面に注目した資料である一方、統合報告書はESGなどの非財務の情報まで及んでいます。
統合報告書はアニュアルレポートが進化したものと考えてよいでしょう。
想定読者
アニュアルレポートは投資家のみを対象としているのに対し、統合報告書はあくまで主要な読者は投資家ですが、取引先、従業員、入社を検討している人、消費者まで及びます。
近年は就活生でも目を通す方が増えています。
統合報告書の読者はステークホルダー全般に及ぶ事は注意が必要です。
アニュアルレポートと統合報告書を分けている例
ソフトバンクグループはアニュアルレポートと統合報告書を分けている企業です。
ソフトバンクグループの例から、実際にアニュアルレポートと統合報告書の違いを見てみましょう。
・2024年アニュアルレポート|ソフトバンクグループレポート
・2024年統合報告書|ソフトバンクグループ
共通点
- トップメッセージ
- ソフトバンクのビジョン
相違点
- 統合報告書にはガバナンス、環境への取り組みの記載がある
- アニュアルレポートには過去の様々な財務上のデータがある
詳細な財務データが必要である事から、アニュアルレポートの方が投資家向けともいえるでしょう。
中身を見ると、ソフトバンクのアニュアルレポートは主に機関投資家を想定して作成しているようにも感じます。
アニュアルレポート(統合報告書)を作成するメリット
IR担当者の主な目的は自社の魅力を投資家に知ってもらい、企業価値を適切に株価へ反映させることです。
統合報告書は自社の魅力を伝えるチャンスです。
数値上の魅力に加えて定性的な情報も伝えられる
統合報告書では財務数値だけでなく、企業の経営理念、ビジネスモデル、リスクと機会、将来戦略などの定性的な情報も含めることができます。
これにより、財務上では見えづらい価値を伝えることができます。
企業の持続可能性を伝えられる
統合報告書を通じて、ESGの取り組みやガバナンスが機能しているかを示すことができます。
この透明性の高い情報開示は、企業の社会的責任や持続可能な経営への姿勢を示すことができます。
優秀な人の雇用・従業員の意欲向上にもつながる
従業員や求職者に読んでもらうことで自社の存在意義を理解してもらい、業務への意欲を促し、企業価値向上につながります。
投資家だけでなく、従業員や求職者にも影響を及ぼす「人的資本に関する取組み」の開示には注力した方が良いでしょう。
アニュアルレポート(統合報告書)の内容は?
統合報告書では投資家が期待している内容を書くことで、より自社の魅力を理解してもらう事ができます。

そのため、以下の要素を含めることが重要です。
社長や重要な役職者へのインタビュー
経営者やCXOクラスへのインタビューは、投資家にとって有益です。
アンケート結果によると、トップメッセージは80%の投資家が重視しており、最も重視されている内容です。
積極的に経営者の思いや考えを伝える機会を増やすことで、そのような思いに共感する投資家が長期的な株主になってくれる可能性もあります。
客観的視点で自社がどう映るかを見せるためにも、社外役員へのインタビューも検討すると良いでしょう。
事業内容や沿革
自社の事業が生み出す価値や、過去の沿革からどのような競争優位性を獲得してきたのかも示せると良いでしょう。
また、現在の強みを今後どう強化していくのか、どのような新しい強みを作っていくのかという”過去から現在、未来”まで線で繋げるイメージも大切です。
財務的なKPI
昨今ではJPXより、「資本コストを意識した経営」が求められるようになってきました。
そのような背景からROEやROIC、その他注力しているKPI目標を定量的に示すことで投資家に安心感を与えられます。
特に投資家は「資本効率」に注目しているという事を意識しましょう。
アニュアルレポート(統合報告書)の好事例
実際に企業のアニュアルレポート(統合報告書)の事例を見ていきましょう。
sansan株式会社
sansanは名刺管理クラウドを開発している企業です。
同社の統合報告書は以下のような構成となっており、トップメッセージの質が高い点が特徴的です。

これまでの沿革から価値創造プロセス、競争優位性、長期ビジョンと過去から未来まで一貫し、今後の成長可能性も明確でわかりやすいです。
同社の時価総額は2,900 億円程度のため、時価総額数千億円規模の企業は参考にすると良いでしょう。
株式会社リンクアンドモチベーション
リンクアンドモチベーションは人材系のコンサルティング事業を行う企業で、構成は以下の通りです。

それぞれの事業部ごとのKPIを開示しており、投資家目線で業績の善し悪しを判断できる材料を提供しています。
リンクアンドモチベーションの時価総額は577億円であるため、1,000億円以下の企業は参考にすると良いでしょう。
【まとめ】アニュアルレポート・統合報告書とは
最後に本記事の内容をまとめます。
- アニュアルレポートには企業の財務情報だけでなく総合的な情報が含まれている
- 統合報告書とアニュアルレポートに大きな違いはなく、両方出している企業は稀
- アニュアルレポートには社長インタビューなどを含め、定性的な情報も伝えるのが大切
アニュアルレポート(統合報告書)作成の参考になれば幸いです。