機関投資家とは?種類や個人投資家との違い・IR担当者が知るべき基礎知識

この記事の結論
- 機関投資家とは顧客から資金を預かり株式や債券で運用する法人投資家のこと
- 年金基金・保険会社・投資信託会社など多様な種類があり、市場に大きな影響力を持つ
- 個人投資家と異なり長期投資を重視し、IR担当者にとって重要なステークホルダー
IR担当者にとって、機関投資家は最も重要な対話相手の一つです。
しかし、機関投資家がどのような存在なのか、個人投資家とどう違うのか分からない方も多いでしょう。
そこで本記事では、機関投資家の基本知識から種類、IR活動における重要性まで詳しく解説します。
機関投資家とは
機関投資家とは、顧客から資金を預かり株式や債券で運用する法人投資家のことです。
個人投資家が自己資金で投資を行うのに対し、機関投資家は多くの人から集めた資金をまとめて運用します。
生命保険会社なら保険料、年金基金なら年金積立金、投資信託会社なら個人投資家の資金が運用の元手となります。
機関投資家について、以下の2つの観点から詳しく見ていきましょう。
機関投資家の特徴
機関投資家の最大の特徴は、個人では投資できない規模の巨額資金で運用を行うことです。
例えば、日本最大の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は約260兆円もの資産を運用しています。
出典:年金積立金管理運用独立行政法人「2024年度第3四半期運用状況(速報)」
機関投資家の主な特徴として、以下の4つが挙げられます。
特徴 | 詳細 |
---|---|
大規模な資金力 | 個人では投資できない規模の巨額資金で運用 |
長期投資重視 | 短期売買よりも長期的な視点で投資判断 |
専門性の高さ | プロの運用担当者が投資判断を実施 |
組織的な運用 | 個人の判断ではなく組織として投資を実行 |
これらの特徴により、機関投資家は市場の安定化や企業の健全な成長に重要な役割を果たしています。
機関投資家の役割と企業への影響
機関投資家は単なる投資家ではなく、資本市場と企業経営に大きな影響を与える存在です。
投資先企業に対しては株主として議決権を行使し、経営の改善や企業価値向上に積極的に関与しています。
機関投資家が企業に与える主な影響は以下のとおりです。
- 株主総会での議決権行使を通じたガバナンス強化
- 建設的対話による経営戦略の改善提案
- ESG投資を通じた持続可能な経営の推進
- 長期的な視点での企業価値向上への貢献
このため、企業のIR担当者にとって機関投資家との良好な関係構築は、企業価値向上のための重要な取り組みとなっています。
機関投資家の主な種類
機関投資家には様々な種類があり、それぞれが異なる資金源と運用目的を持っています。
ここでは、代表的な機関投資家の種類とその特徴について詳しく解説します。
以下の4つの主要な機関投資家について見ていきましょう。
年金基金
年金基金は、年金加入者の保険料を原資として運用する機関投資家です。
主な特徴としては以下のとおり。
項目 | 内容 |
---|---|
運用期間 | 数十年にわたる超長期運用 |
投資戦略 | 分散投資によるリスク軽減重視 |
運用目標 | 安定的な運用成果の確保 |
社会的責任 | 将来の年金給付に対する責任 |
年金基金は国民の老後の生活を支える重要な役割を担っているため、安定性を最優先とした運用を行っています。
保険会社(生命保険・損害保険)
保険会社は、保険契約者が支払う保険料を運用資産の元手として投資を行います。
生命保険会社と損害保険会社では運用期間が異なり、生命保険は長期運用、損害保険は比較的短期の運用が中心です。
保険会社の運用における主な特徴は以下のとおりです。
- 将来の保険金支払いに備えた安定運用
- ALM(資産負債総合管理)による運用
- 国内債券を中心とした保守的な投資
- 近年はESG投資への取り組みも強化
保険会社は契約者への責任を果たすため、リスクを抑えた堅実な運用を重視しています。
投資信託会社・アセットマネジメント会社
投資信託会社は、個人投資家から集めた資金をまとめて運用する機関投資家です。
証券会社や銀行で販売されている投資信託商品(ファンド)を作成し、専門的な運用を行っています。
主な投資信託会社・アセットマネジメント会社の運用資産規模は以下のとおりです。
会社名 | 運用資産規模(概算) |
---|---|
野村アセットマネジメント | 約88兆円 |
大和アセットマネジメント | 約33兆円 |
三菱UFJアセットマネジメント | 約37兆円 |
日興アセットマネジメント | 約37兆円 |
これらの会社は、多様な投資戦略を用いて個人投資家のニーズに応える商品を提供しています。
その他の機関投資家
上記以外にも、多様な機関投資家が市場で活動しています。
信託銀行、共済組合、農業協同組合、ヘッジファンドなどがその代表例です。
その他の主要な機関投資家の特徴は以下のとおりです。
- 信託銀行
- 顧客の資産を信託契約に基づいて運用
- 共済組合
- 公務員や教職員の共済資金を運用
- 農業協同組合
- 組合員の資金を運用
- ヘッジファンド
- 高いリターンを目指す積極的運用
これらの機関投資家も、それぞれの特性に応じた投資戦略で市場に参加しています。
機関投資家と個人投資家の違い
機関投資家と個人投資家には、投資スタイルや市場への影響力において大きな違いがあります。
IR担当者がこれらの違いを理解することで、より効果的なコミュニケーション戦略を立てることができます。
以下の3つの観点から、両者の違いを詳しく見ていきましょう。
資金規模と市場への影響力
機関投資家と個人投資家の最も大きな違いは、運用する資金の規模です。
機関投資家は数兆円から数十兆円の資金を運用するため、一度の取引で株価に大きな影響を与えることができます。
一方、個人投資家は数十万円から数千万円程度の資金で投資を行うのが一般的です。
両者の違いを以下の表で比較してみましょう。
項目 | 機関投資家 | 個人投資家 |
---|---|---|
運用資金規模 | 数兆円〜数十兆円 | 数十万円〜数千万円 |
市場への影響力 | 大きい(株価を動かす) | 小さい(限定的) |
取引単位 | 大口取引 | 小口取引 |
市場シェア※ | 外国法人を除く:約51% 外国法人を含む:約83% | 約17% |
このような資金規模の違いから、機関投資家の動向は市場全体のトレンドを左右する重要な要因となっています。
投資期間とアプローチ
機関投資家は長期投資を基本とした安定的な運用を重視します。
年金基金であれば数十年、保険会社であれば数年から十数年にわたって同じ銘柄を保有することも珍しくありません。
個人投資家は短期売買から長期投資まで、多様な投資スタイルを選択できる自由度があります。
投資期間の違いによる特徴は以下のとおりです。
- 機関投資家
- 企業の長期的な成長性や持続可能性を重視
- 短期的な株価変動に惑わされない安定運用
- 個人投資家
- デイトレードから長期投資まで選択肢が豊富
- 感情的な判断により短期売買になりがち
このため、企業のIR活動では機関投資家に対して中長期的なビジョンや戦略を明確に伝えることが重要になります。
投資判断プロセス
機関投資家は組織的かつ体系的な投資判断プロセスを持っています。
専門のアナリストやポートフォリオマネージャーが企業分析を行い、投資委員会での議論を経て投資判断を下します。
個人投資家は自身の判断で投資を行うため、情報収集から投資判断まで全て一人で行う必要があります。
投資判断プロセスの違いを以下の表で比較してみましょう。
項目 | 機関投資家 | 個人投資家 |
---|---|---|
分析体制 | 専門アナリスト・チーム | 個人での情報収集 |
判断プロセス | 投資委員会での協議 | 個人の判断 |
情報源 | 企業との直接対話・専門情報 | 公開情報・メディア |
意思決定スピード | 慎重(時間をかける) | 迅速(即座に判断可能) |
このような違いを理解することで、IR担当者は機関投資家に対してより効果的な情報提供を行えます。
IR担当者が知るべき機関投資家との関わり方
機関投資家は企業価値向上の重要なパートナーであり、適切な関係構築が企業成長の鍵となります。
しかし、機関投資家が何を求めているのか、どのようにコミュニケーションを取れば良いのか分からない方も多いでしょう。
ここでは、IR担当者が押さえるべき機関投資家との関わり方について解説します。
以下の2つの観点から詳しく見ていきましょう。
機関投資家が重視するIR情報
機関投資家が投資判断で最も重視するのは、企業の持続的な成長性と収益性です。
単なる業績数値だけでなく、その背景にある事業戦略や競争優位性についても詳しく知りたがっています。
機関投資家が特に注目するIR情報は以下のとおりです。
情報カテゴリ | 具体的な内容 | 重要度 |
---|---|---|
財務情報 | 売上・利益の成長性、ROE、キャッシュフロー | 最重要 |
事業戦略 | 中期経営計画、新規事業、M&A戦略 | 重要 |
リスク情報 | 事業リスクとその対策、コンプライアンス | 重要 |
ESG情報 | 環境・社会・ガバナンスへの取り組み | 重要度が上昇傾向 |
これらの情報を体系的に整理し、分かりやすく提供することが機関投資家との信頼関係構築につながります。
効果的なコミュニケーション方法
機関投資家との効果的なコミュニケーションには、双方向の建設的な対話が不可欠です。
単なる情報提供ではなく、機関投資家の質問や懸念に対して誠実に答える姿勢が重要になります。
主なコミュニケーション手段と効果的な活用方法は以下のとおりです。
- 決算説明会
- 業績の背景と今後の戦略を詳しく説明
- 1on1ミーティング
- 個別の質問に対する深い議論
- IR資料
- 見やすく理解しやすい資料作成
- 工場見学・事業説明会
- 事業の現場を直接見てもらう
継続的な対話を通じて機関投資家の理解を深めることで、長期的な投資につながる可能性が高まります。

【まとめ】機関投資家との関係構築で企業価値を高めよう
最後に本記事の内容をまとめます。
- 機関投資家とは顧客から資金を預かり株式や債券で運用する法人投資家のこと
- 年金基金・保険会社・投資信託会社など多様な種類があり、市場に大きな影響力を持つ
- 個人投資家と異なり長期投資を重視し、IR担当者にとって重要なステークホルダー
機関投資家は単なる投資家ではなく、企業の持続的成長を支える重要なパートナーです。
彼らとの建設的な対話を通じて企業価値向上を実現するためには、適切なIR活動が欠かせません。
IR担当者として機関投資家との関係構築に取り組み、企業の未来を切り拓いていきましょう。

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