決算短信の提出期限はいつ?45日ルールの詳細と遅延時の対応策とは

この記事の結論
- 決算短信は決算期末から45日以内の提出が適当とされている
- 30日以内の早期開示がより望ましく、50日を超えると追加報告義務が発生
- 期限遅延は投資家の信頼失墜や株価への悪影響を招くリスクがある
上場企業にとって、決算短信の適時開示は重要な義務の一つです。
しかし、「45日ルール」と呼ばれる提出期限について、正確な計算方法や遅延時のリスクを把握できていない企業も少なくありません。
そこで本記事では、決算短信の提出期限について、45日ルールの詳細から期限遅延時の対応策までをわかりやすく解説していきます。
決算短信の提出期限「45日ルール」とは
決算短信の提出期限は、一般的に「45日ルール」と呼ばれています。
これは東京証券取引所が定める有価証券上場規程に基づくもので、決算期末後45日以内に決算短信を開示することが適当とされています。
ただし、この45日ルールには段階的な考え方があり、より早期の開示が推奨されているのが特徴です。

45日ルールの法的根拠と規定内容
45日ルールは、証券取引所の自主規制として定められた適時開示のルールです。
東京証券取引所の「決算短信・四半期決算短信作成要領等」では、決算期末後45日以内の開示を適当としています。
開示時期 | 評価 | 備考 |
---|---|---|
30日以内 | より望ましい | 早期開示として推奨 |
31~45日 | 適当 | 標準的な開示期限 |
46~50日 | 期限超過 | 追加報告は不要 |
50日超過 | 大幅遅延 | 遅延理由の報告義務 |
これは法的な強制力を持つ金融商品取引法上の義務ではなく、取引所規則に基づく開示要請という位置づけです。
そのため、期限を過ぎても直接的な法的ペナルティはありませんが、投資家や市場からの信頼に大きく影響します。
30日以内の早期開示が望ましい理由
東証は45日以内の開示を適当としながらも、30日以内の早期開示をより望ましいとする理由は、主に以下の3点があります。
- 投資家への迅速な情報提供
- 企業の透明性・信頼性の向上
- 株価の適正評価への貢献
これは決算短信が「速報」としての役割を持つためで、投資家にとって迅速な情報提供が重要だからです。
早期開示により企業は投資家からの信頼を獲得でき、株価の適正な評価にもつながる可能性があります。
実際に多くの上場企業が30日以内での開示を実現しており、競合他社との比較でも早期開示は重要な要素なのです。

四半期決算短信との期限の違い
通期決算短信と四半期決算短信では、期限に対する考え方に若干の違いがあります。
四半期決算短信も同様に45日以内の開示が求められますが、30日以内の早期開示推奨は通期決算短信ほど強調されていません。
これは通期決算短信の方が投資家にとってより重要度が高く、年度の総括的な情報として注目度が高いためです。
ただし、四半期決算短信も適時開示として重要な要素であり、期限管理は同様に必須となります。
決算短信提出期限の具体的な計算方法
決算短信の提出期限を正確に把握するには、決算期末日からの日数計算が重要です。
特に休日の扱いや決算月による違いを理解することで、適切な期限管理が可能になります。
ここでは、最も多い3月決算企業を中心に、具体的な計算方法を詳しく解説します。
他の決算月についても参考例を示すので、自社の決算時期に合わせて確認してください。
3月決算企業の期限計算例
決算期末日 | 45日後 | 実際の期限 | 備考 |
---|---|---|---|
2024年3月31日 | 5月14日 | 5月14日 | 平日のため変更なし |
2025年3月31日 | 5月15日 | 5月15日 | 平日のため変更なし |
2026年3月31日 | 5月15日 | 5月16日 | 5/15が土曜のため翌営業日 |
3月決算企業の場合、決算期末日は3月31日となります。
この日から起算して45日以内に決算短信を開示する必要があり、通常は5月15日前後が提出期限となります。
- 決算期末日から45日以内で計算
- 45日目が休日の場合は翌営業日まで
- ゴールデンウィークの影響を考慮
ただし、45日目が土日や祝日に該当する場合は、翌営業日までが期限となるため注意が必要です。
ゴールデンウィークの影響もあるため、3月決算企業は特に期限計算を慎重に行う必要があります。
その他決算月の期限パターン
3月決算以外の企業についても、同様の計算方法で期限を算出できます。
12月決算の場合は2月中旬、9月決算の場合は11月中旬が標準的な提出期限です。
決算月 | 決算期末日例 | 45日後の期限目安 | 主な業界 |
---|---|---|---|
12月 | 12月31日 | 2月中旬 | 外資系企業、IT関連 |
2月 | 2月末日 | 4月中旬 | 小売業、アパレル |
3月 | 3月31日 | 5月中旬 | 製造業、建設業 |
9月 | 9月30日 | 11月中旬 | 商社、一部製造業 |
自社の決算月に応じて、適切なスケジュール管理を行っていきましょう。
決算短信と他の開示書類の期限比較
上場企業は決算短信以外にも、複数の開示書類を作成・提出する義務があります。
これらの書類はそれぞれ異なる提出期限が設定されており、混同してしまうと重大な期限違反につながる可能性も。
ここでは、主要な開示書類の期限を比較し、それぞれの役割と期限設定の背景を解説します。

開示書類 | 提出期限 | 根拠法令 | 法的拘束力 |
---|---|---|---|
決算短信 | 45日以内(適当) | 取引所規則 | なし |
有価証券報告書 | 3ヶ月以内 | 金融商品取引法 | あり |
四半期報告書 | 45日以内 | 金融商品取引法 | あり(2024年廃止) |
半期報告書 | 45日以内 | 金融商品取引法 | あり |
決算短信は取引所規則に基づく開示であり、法的な強制力はありません。
ただし、決算短信は投資家への情報提供という観点から極めて重要であり、期限遵守は企業の信頼性に直結します。
一方、有価証券報告書や四半期報告書は金融商品取引法に基づく法定開示であり、期限違反には刑事罰が科される可能性も。
有価証券報告書は決算後3ヶ月以内の提出が義務付けられているため、決算短信よりも時間的余裕があります。
- 決算短信:速報性重視、法的拘束力なし
- 有価証券報告書:詳細性重視、3ヶ月以内
- 四半期報告書:2024年に廃止済み
2024年の制度改正により四半期報告書が廃止され、四半期情報は四半期決算短信に一本化されました。
これにより企業の開示負担は軽減されましたが、四半期決算短信の重要性は一層高まっている状況です。
半期報告書は従来通り45日以内の提出が求められており、第2四半期の情報開示として重要な役割を果たします。
各開示書類の期限と役割を正確に把握し、適切なスケジュール管理を行うことが企業のIR活動において不可欠です。
提出期限に遅れた場合のリスクと対応
決算短信の提出期限に遅れると、企業にとって深刻な影響が生じる可能性があります。
法的ペナルティはないものの、投資家からの信頼失墜や株価への悪影響は避けられません。
ここでは、期限遅延による具体的なリスクと、遅れた場合の適切な対応方法を詳しく解説します。
期限遅延時の段階的な影響
決算短信の提出期限には、段階的な評価基準が設けられています。
期間 | 評価 | 主な影響・リスク |
---|---|---|
30日以内 | 望ましい | 投資家からの高評価 |
31~45日 | 適当 | 標準的な評価 |
46~50日 | 期限超過 | 信頼性への疑問、株価への影響 |
50日超過 | 大幅遅延 | 追加報告義務、重大な信頼失墜 |
30日以内の開示が最も望ましく、45日を超えると期限超過として市場から注目される可能性があります。
46~50日の期間は追加報告義務はないものの、投資家への説明が求められる場合もあります。
- 投資家からの信頼性低下
- 株価の下落リスク
- アナリストからの注目・指摘
この段階的な影響を理解し、適切な期限管理を行うことが重要です。
50日を超えた場合の報告義務
決算短信の開示が決算期末後50日を超えた場合、企業は追加の報告義務を負います。
具体的には、決算短信の開示と同時に、遅延理由と今後の改善計画を開示しなければなりません。
この報告は投資家への説明責任を果たすためのものであり、企業の透明性確保に重要な役割を果たします。
たとえ新型コロナウイルス感染症のような特別な事情がある場合でも、適切な説明が求められる点に変わりはありません。
報告項目 | 内容 |
---|---|
遅延理由 | 50日を超えることとなった具体的事情 |
改善計画 | 翌事業年度以降の開示時期に関する見込み・計画 |
対応策 | 再発防止のための具体的措置 |
報告内容は投資家が納得できる具体性が求められ、単なる形式的な説明では不十分です。
また、翌年度以降も同様の遅延が発生しないよう、実効性のある改善策を示すことが重要となります。
この追加報告により、企業は市場からの信頼回復に向けた取り組みを示すことができます。
ただし、遅延自体が企業評価に与える影響は大きいため、事前の適切な期限管理が何よりも重要です。
決算短信の期限管理で注意すべきポイント
決算短信の期限管理を成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
単純な日数計算だけでなく、監査スケジュールや取締役会との調整も考慮した総合的な管理が求められます。
ここでは、実務担当者が特に注意すべき期限管理のポイントを具体的に解説します。

期限日の正確な計算と管理方法
- 決算期末日から正確に45日以内で計算
- 休日の場合は翌営業日まで延長
- 社内締切を2~3日前に設定
期限日の計算では、決算期末日を起算日として45日以内を正確に算出する必要があります。
特に休日の扱いについては、45日目が土日・祝日の場合は翌営業日まで期限が延長されることを覚えておきましょう。
カレンダー上での確認だけでなく、システムやツールを活用した期限管理も効果的。
また、期限の2~3日前を社内締切に設定しておくことで、より余裕を持った対応ができますよ。
監査・レビューとの関係性
決算短信は監査やレビューの終了を待たずに開示することが可能です。
これは決算短信が「速報」としての役割を持つためですが、監査法人との事前調整は重要なポイントとなります。
監査の進捗状況や重要な論点については、決算短信作成前に十分な確認を行いましょう。
後日の有価証券報告書との整合性を保つため、監査法人との連携は欠かせません。
取締役会決議のタイミング調整
決算短信の開示には、多くの企業で取締役会決議が必要となります。
期限管理においては、取締役会の開催日程を早期に確定することが重要です。
取締役の日程調整や資料準備期間を考慮し、逆算してスケジュールを立てる必要があります。
時期 | 対応事項 | 注意点 |
---|---|---|
決算期末前 | 取締役会日程の仮押さえ | 取締役の予定確保 |
決算確定後 | 資料作成・事前説明 | 十分な準備期間確保 |
取締役会当日 | 決議・承認手続き | 迅速な意思決定 |
緊急時の対応として、書面決議やWeb会議の活用も検討しておくと安心です。
期限前倒しのメリットと実践方法
期限前倒しによる早期開示は、企業にとって多くのメリットをもたらします。
投資家からの信頼向上だけでなく、業務の効率化や品質向上にもつながる効果が期待できます。
早期開示を実現するには、決算プロセス全体の見直しと改善が必要。
月次決算の精度向上や、システム化による効率化も有効な手段となります。
【まとめ】決算短信の提出期限
最後に本記事の内容をまとめます。
- 決算短信は決算期末から45日以内の開示が適当とされ、30日以内がより望ましい
- 46~50日は期限超過だが追加報告不要、50日超過で遅延理由等の報告義務が発生
- 他の開示書類との期限違いを理解し、適切なスケジュール管理が重要
- 期限遅延は投資家の信頼失墜や株価への悪影響を招くリスクがある
決算短信の期限管理は、IR担当者にとって最も基本的で重要な業務の一つ。
単なる事務処理ではなく、企業の透明性と信頼性を示す機会として捉えることが大切です。
本記事で解説した計算方法や注意点を参考に、自社の期限管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。
適切な期限管理により投資家との良好な関係を築き、企業価値向上につなげていきましょう。
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